ヘンデルのカンタータ  歌詞の意味を考える

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zoom RSS 9曲のドイツ語アリア

<<   作成日時 : 2017/07/04 16:01   >>

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今回取り上げた作品は、当ブログのタイトルの範疇を逸脱するものではありますが、「ヘンデルの声楽曲 歌詞の・・・」と改題するほどのことでもないので、そのまま続けます。

この Neun Deutsche Arien(9曲のドイツ語アリア) はヘンデルの作品としては、比較的よく知られている方だと思われます。

「作曲家・アーティスト別楽曲人気順位検索」ソフトで「ヘンデル」と入力すると、彼の作品の人気順位は、
1.メサイア
2.オンブラ・マイ・フ
3.ラッシャ・キオ・ピアンガ
4.水上の音楽
5.王宮の花火の音楽
6.ハーモニアス・ブラックスミス
7.シー、コンカリング・ヒーロー・カムズ!

と表示され、当作品はその次の8位に来ています。しかし7位の「シー、コンカリング・・・」は、かならずしもヘンデル作品とは認識されないまま人口に膾炙しているのでこれは別格とし、当作品が7位と見てもいいでしょう。
このソフトは便利なもので、ヴィヴァルディ、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパンからジョン・ケージに至るまで、何が人気の作品なのかわかります。もちろんクラシックだけではなく、ビートルズやローリング・ストーンズ、さらにはカウント・ベーシー、エラ・フィッツジェラルド等々も検索できます。日本人のアーティストもあって、三波春夫さんや石川さゆりさん等有名どころは参照可能ですが、エー・ケー・ビー四十八はまだ評価が定まっていないのか設定されていません。

・・・・・・

というのは全部うそです。そんなソフトは持っていません。
昨夜、就寝時間が遅かったので、眠くてPCの前でウトウトしてしまい夢を見たらしい。

余談はともかく、この作品はヘンデルとしては比較的よく聴かれているものであることには間違いないでしょう。CDの数もそれなりにあるようです。私の手元にも5種類あります。まあ、そのうちのひとつ、オジェー盤は図書館にあるのを見つけて借り出したものですけどね。

1724〜1727年頃にロンドンで作曲されたとのことです。
作詞者は、あのブロッケス受難曲の歌詞を書いた、バルトルド・ハインリッヒ・ブロッケス。
ヘンデルはもともとドイツ人だから母語はドイツ語であるわけですが、ドイツ語テキストによる作品は意外に少ないです。当作品と上記の受難曲以外には、教会カンタータも作曲されていたそうですが(1704年頃)消失してしまっているので、現存するものとしては、いずれもブロッケスのテキストによるもの、ということになります。

歌詞の内容は、自然の美しさとその創造主を讃えるものがメインです(7曲)。あとの2曲は、「あくせくせずにゆっくり休んだり、自然の美しさを愛でたりするべき」という忠告ないしは人生訓のようなもの。
世俗的な作品とは言えないけれど、そんなに宗教色の強い歌詞ではなく、筆者のように普段は宗教に関係ない生活をしている者の心にもすっと入ってきますね。

伴奏はオブリガート楽器と通奏低音によるものです。
オブリガート楽器はヴァイオリンであったり、曲によってヴァイオリン、フルート、オーボエを使い分けたり、CDによって異なっています。
演奏時間は、手元にあるもので最短44分38秒〜最長52分38秒と、これもCDによって差があります。


原語歌詞と日本語大意。

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2曲目の「戯れる波の輝く光が」HWV203 の旋律は、オペラ「ジュリオ・チェーザレ・イン・エジット」HWV17 の中のニレーノのアリア「チャンスを逸する者は(Chi perde un momento)」と同じものですね。
同オペラの1724年初演時にこのアリアはなく、1725年の再演時に加えられたものだそうです。ニレーノはクレオパトラの秘書というか、従者というかあまり重要な役ではないので、当初はアリアも割り当てられてもいなかったのだけれど、翌年の再演時にはやや上手な歌手が演じたのか、アリアも歌えるようにしたのです。
ドイツアリアと同時期のものなので、どちらが先に成立していたのかはわかりません。
再演時にアリアが必要になったので、あわててドイツアリアの1曲を転用したとも、再演が終わってオペラで使ったアリアが不要になったのでドイツアリアで有効利用したとも、いずれの解釈も時間的には可能と思われます。

3曲目の「Süßer Blumen Ambraflocken」(HWV204)は、9曲の中で筆者が最も気に入っているものですが、歌詞の解釈について「Ambraflocken」という単語の意味がわからなくてちょっと難儀しました。
これが固有名詞の花の名前であれば意味は簡単なのですが、どうもそうではないらしい。

CDのブックレットで英訳してあるのを見ると、二つが「amber petals」(トロポヴァ盤およびベアード盤)、ひとつが「amber flakes」(ヘーグマン盤)となっていて、いずれも「琥珀色の花びら」のような感じです。オジェー盤とシュパイザー盤には残念ながら英訳がありません。
しかしドイツ語で「琥珀」は「Bernstein」(英語読み風になまるとバーンスタイン、高名な指揮者兼作曲家の名前でもある)です。一方「Ambra」を独和辞典で引くと「竜涎香」と出ていますが、これはマッコウクジラの胆石のようなもので、香料ではあるものの花の名前ではない。したがって、これを「竜涎香の花びら」としたオジェー盤の和訳には問題があります。

また「矢車菊」とも和訳されています。「Flocken Blume」なら辞書に「矢車菊」とありますが、「Blumen Ambraflocken」を「矢車菊」と称していいかどうか、何とも言えません。

かように縷々検討を実施した結果、部呂家洲氏はAmbraなる語にて「芳香を具備する物」の表意を希求していたのではないかとの認識に到達した次第であります。よって第1行目に関し「かぐわしく咲くやさしげな花」と記することが妥当であろうと愚考いたしますものの、一方「琥珀色に咲くやさしげな花」、或いは「やさしげに咲く矢車菊の花」との表記も、もしかすると不可能ではないかもしれないのではないかと推定できる余地を残していようとも考えられそうです。
勿論、時現代に至ってはかの部氏に「どれが合っているか」確認すること能わず、ではありますが。

ちなみに「琥珀色 amber」とはどのような色か、英国では信号機の黄色をアンバーと呼ぶらしいので(ライトハウス英和辞典)、ああいう系統の色だと思えばいいのでしょう。

8曲目の「気持ちのいい木立の中」HWV209 は9曲中唯一ダ・カーポしないアリアで、A部分に続きB部分が歌われて終わります。

最後の曲「炎のような真紅の薔薇」HWV210 は、薔薇の美しさを愛でることでそれを創りあげた主を讃える、というこの曲集のメインテーマに沿ったものです。
そもそも薔薇は古代から人の手によって栽培されてきたもので、19世紀には品種改良も盛んになって新種も多く生み出されてきました。ブロッケスさんの見ていた18世紀の薔薇といえども、それなりに人為的交配がなされていたと思われます。だからちょっと理屈をこねると、歌詞の薔薇は必ずしも創造主の手が創り上げたままではないだろう、人の手も加わっているものだろう、ということです。

画像
「真紅の薔薇」2017年5月27日(さいたま市与野公園)

創造主が存在するかどうかはわかりません。存在があるとしても人間などが認識できる次元であるわけはないですが、存在するなら
「人間どもが小賢しく薔薇の品種改良したところで、わしが作成したプログラミングどおりで想定の範囲内」
「人間なんて宇宙の辺境にある小さな恒星系の部分でうごめいてるバイキンみたいなもの、薔薇を改良しようが、核戦争して滅びてしまおうが、わしがデザインした宇宙の動きの大勢に影響ないわ」
などと言うのかもしれません。



参考資料
CD
1.アーリーン・オジェー(ソプラノ) ペーター・ミリング(vn)他
 「9つのドイツアリア」Deutsche Schallplatten X (1980)   国内再発売TKCC-15256(2001)

2.エリザベート・シュパイザー(ソプラノ) ヤープ・シュレーダー(vn)他
 「HÄNDEL Neun Deutsche Arien」 Jecklin-disco 589-2(1984)

3.クリスティーナ・ヘーグマン(ソプラノ) イ・クワットロ・テンペラメンティ
 「GEORG FRIEDRICH HÄNDEL Vocal and Instrumental Chamber Music」 BIS CD-403(1988)

4.イレーナ・トロポヴァ(ソプラノ) ステファン・マイ(vn)他
 「HÄNDEL Neun Deutsche Arien」 MATOUS(1993)

5.ジュリアン・ベアード(ソプラノ) テンペスタ・ディ・マーレ
 「George Frideric Handel   Flaming Rose」 CHANDOS CHAN0743(2006)

書籍
1.三澤寿喜「ヘンデル」音楽之友社(2007)

2.倉石五郎編「コンサイス独和辞典」三省堂(1961)

3.相良守峯編「JAPANISCH-DEUTSCHES WÖRTERBUCH」三修社(1964)

4.竹本滋 他編「ライトハウス英和辞典」研究社(2002)










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