ヘンデルのカンタータ  歌詞の意味を考える

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zoom RSS トン・コープマンのカンタータCD

<<   作成日時 : 2016/11/27 15:31   >>

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「コープマンが録音したカンタータ」といえば、バッハのカンタータがまず思い浮かびます。なにしろ全曲録音のCDもリリースしているくらいの人ですから。しかしこのサイトで取り上げるのは、当然のことながら、ヘンデルのカンタータです。

コープマンとアムステルダム・バロック・オーケストラの演奏を録音した下記のCDが、最近発売されたのでさっそく購入して聴いてみました。
「GEORG FRIEDRICH HÄNDEL 'Tu fedel? Tu costante?' HWV171a and other Italian cantatas」
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このCDにはカンタータ5作品(ソプラノ用3、バス用2)と二重唱曲(ソプラノ、バス)2作品が収録されています。なかでも目玉ともいうべきものは、「Tu fedel? Tu costante? (あなたが貞節?心変わりしないって?)」HWV171の異稿HWV171aです。「世界初録音」とも書いてあります。
実はHWV171に異稿があるとはまったく知らなくて、このCDの宣伝コピーではじめて教えられ、それなら買って見るかという気になったのですね。以前に書いたHWV171の記事はこちら

ブックレットに解説を書いているJohn H. Roberts氏によると、このHWV171aの手稿譜はコープマンが自身のライブラリーに所蔵していたものだそうです。それを、ロバーツ氏が見つけHWV171の異稿だと気付いた、と記されています。

まず歌詞をHWV171のものと比較して見ましたが、基本的にはかわりません。改行の位置やコンマを打つ位置が違ったり、語句の反復を記載するかしないか、など無視できる程度のちがいはあるにしても、同一のテキストであるといえます。

音楽の方はどうかと見ると、まず気づくのは冒頭の器楽演奏楽章「ソナタ」がないことです。これはいい曲で好きだったので残念です。
HWV171の楽章はレチタティーヴォとアリアのペア四つで構成されていますが、この作品HWV171aでも同様です。テキストが同じなので当然のことですが。ダ・カーポするアリアとそうでないアリアの区別も変わりません。

第1レチタティーヴォと第1アリアは171と同じ音楽なのですけれど、第2レチタティーヴォの3行目くらいから違ってきます。
第2アリア「Se Licori」は、171と171aで全く異なっています。どこかで聴いたことのあるメロディーだと思いましたが、このCDにも収録されている「心地よい眠りのなかで Nel dolce dell'oblio」HWV134 の終曲のアリア「Ha l'inganno」とよく似ています。そのものズバリではないものの、主旋律は同じもののように思えます。

第3アリア「Se non ti piace」も171とは全然ちがうもので、こちらはシチリアーノのリズムで切々と歌われます。
終曲の第4アリア「Sì crudel]は、171では明るめの舞曲、主人公は気持が吹っ切れて将来に望みも、という感じで終わっています。しかしこの171aでは,テンポは速めなものの悲しい雰囲気のアリア。まだまだ辛い気持が残されたままで終わるのです。

こういう風に聴いてくると、おなじみのHWV171とはまた一味ちがういい作品と思われます。素人考えでは、素晴らしいものが掘り出され、ヘンデルのほぼ未知の作品に接することができて有難い、ということにつきるのです。
しかし、この作品HWV171aは学問的にヘンデルの真作、というお墨付きは出ているのでしょうか。ブックレットには、そういうようなことが何も書かれていません。
またコープマンの所蔵だというこの譜は、「manuscript」(手稿譜すなわち手書きの譜)とは記載されていますが、「autograph」(自筆譜)とは書いてありません。
作曲年代についても「1706年にヴェネツィアかフィレンツェで作曲された」とあるのみで、その根拠は示されてはいないのです。
ヘンデル専門の音楽学者の方々のご意見をぜひお聞きしたいです。ネットで検索しても、そのあたりのことを見つけることはできませんでした。

ブックレットの解説(Roberts氏)に、この作品の歌詞のシチュエーション説明で以下のような文章があります。
"Tu fedel? Tu costante?"is the complaint of an injured lover, a woman who has discovered that her beloved Fileno has been unfaithful.
これでは、主人公の女性が今はじめてフィレーノの不誠実さを知った、その結果の怒りがこの歌詞だ、と受け取れてしまいます。しかしこれはそうではありませんね。
主人公はフィレーノがいい加減なヤツで、あちこちで女性にちょっかいだしていることなどとっくに承知しています。だからFillやLicoriやLidiaなどの固有名詞を挙げることができたのです。にもかかわらず、フィレーノをあきらめきれないので苦しんでいるところへ、彼が無神経にも「君に対しては貞節だ、心変わりしていないよ」などとほざいたので(テキストにはありませんが、そうに決まってます)、主人公がブチ切れて「あなたが貞節?心変わりしないって?ああ、よく言うわね」と歌いだすことになったのです。

ブックレットにある原語の歌詞を掲げておきます。上にも書きましたが、改行するところが違うなど些細な差異はありますが、ほぼ同じものです。日本語表現もHWV171と変えていません。


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このCDにはHWV171aの他、カンタータで
「Aure soavi e liete(心地よくうれしいそよ風よ)」HWV84
「Cuopre tal volta il cielo(時々空は)」HWV98
「Dalla guerra amorosa(恋の苦悩と闘うことから)」HWV102a
「Nel dolce dell'oblio(心地よい眠りのなかで)」HWV134

二重唱曲で
「Giù nei tartarei regni(なんと私たちは地獄へ向かっているかのよう)」HWV187
「Tacete, ohimè, tacete(静かに、ああ、静かにして)」HWV196

が収録されています。

ソプラノのイサベル・アリアス・フェルナンデスさんはキューバ出身だそうです。ソプラノにしてはやや声が低めで、メゾソプラノくらいの声のように思えますが、落ち着いた歌唱が聴けます。
バスのクラウス・メルテンスさんはコープマンのCDでもうおなじみの人ですが、ここでも安定したいい声を聴かせてくれています。



参考資料
CD
イサベル・アリアス・フェルナンデス(ソプラノ)、クラウス・メルテンス(バス)
トン・コープマン(指揮)アムステルダム・バロック・オーケストラ
「GEORG FRIEDRICH HÄNDEL 'Tu fedel? Tu costante?' HWV171a and other Italian cantatas」
Challenge Records CC72265(2016)






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