ヘンデルのカンタータ  歌詞の意味を考える

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zoom RSS 「心に喜びが戻るよ」

<<   作成日時 : 2016/09/11 15:32   >>

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例によって音源のない作品です。


「心に喜びが戻るよ」(Torna il core al suo diletto)HWV169


コンティヌオ・カンタータで、三澤寿喜氏の著書「ヘンデル」の巻末作品リストによるとソプラノ用ということです。
自筆譜が残されていなく筆写されたものだけが伝わっているので、作曲年代もよくわからないようですが、1709年以前にイタリアで成立したものらしい、とされています。
作詞者は不明。


歌詞大意。

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最初のアリアでは、もちろん自分のことを歌っているのですが、「僕が」ではなくて「この心は」という風に自分の「心」を主語にしています。この心がどうした、こうした、と説明するのです。カンタータやオペラの世界ではよくあるレトリックではありますが。
有名なところではオペラ「アルチーナ」の中の魔女アルチーナのアリア「Ah! mio cor!」など。
日本語ではそのあたりをあいまいにしたまま表現できるので、便利です。

次のレチタティーヴォでは「僕」が主語になります。「僕」はどうだった、「僕」がこうだった、などと縷々述べています。
終曲のアリアでは、一転また「心」が主語となります。クローリから離れないのも心なら、彼女と一体になりたいのもまた心なのです。

レチタティーヴォの17行目(後から3行目)の「aurora」(英語ではdawn)は普通には「夜明け」とか「暁」とかという意味でしょうが、ギリシャ神話の女神アウロラを意味することもあります。
暁の女神アウロラ(エオスともいう)は、息子のメムノンがトロイ戦争でアキレスとの勝負に負けて殺されたので、悲しんでずっと涙を流しています。朝になると草の上にたまっている露が彼女の涙なのです。
歌詞のこの部分は、女神アウロラのエピソードを思い出させる仕掛けにもなっているように思われます。

アウロラに関する美術作品は、

ミケランジェロ作の大理石像「Dawn」。フィレンツェのサン・ロレンツォ教会所蔵。
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絶望的な表情が印象的です。

また、こんな絵もあります。
イタリアの画家 Giovanni Andrea CARLONE(1639-1697)の作品「Aurora (Dawn)」。
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こちらは明るい顔ですが、息子を亡くす以前の時代を描いたものなのでしょう。

この作品の歌詞を原語で眺めていると、同じ語を連続して使用している部分がいくつかあることに気づきます。
最初のアリアの1行目と2行目にある「torna」、次のレチタティーヴォの12行目と16行目にある「or sì」、終曲アリアの3行目と5行目の「unito」です。
また相手の女性(クローリ)への呼びかけも多くあります。初めのアリアでは「mio ben」と「O cara」。レチタティーヴォでは「Clori adorata」と来て、最後のアリアでまた「mio ben」。

こんな風に繰り返される語句が多いとなんとなく「くどい」という感じがします。普通はこんな場合、「くどさ」を減じるため日本語表現では異なったことばを使用するのですが(最初のアリアで1行目のtornaが「戻る」なら2行目は「帰る」、終曲のunitoは初めに「一体」を使ったら次は省略する、とか)、ここでは原詩の「クドイ感」を表現するため、あえて同じ日本語をくりかえして使ったところがあります。
まあ、こんなことは筆者がひとりで喜んでいるお遊びなので、「あほか」と言われたらそれまでですが。



参考資料
書籍
1.ELLEN T. HARRIS「Handel as Orpheus」HARVARD UNIV. PRESS(2001)

2.ブルフィンチ作 野上弥生子訳「ギリシア・ローマ神話」岩波文庫(2011 1987改版発行)

3.三澤寿喜「ヘンデル」音楽之友社(2007)







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