ヘンデルのカンタータ  歌詞の意味を考える

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zoom RSS 「ああ、やはり間違いないのだ」

<<   作成日時 : 2013/07/22 16:04   >>

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今回は、ヘンデルの作品をHWVナンバー順にならべたとき、カンタータのトップを飾る作品を取り上げています。と言っても、カンタータの順番は、原語歌詞の歌い出しの句(インチピト)をアルファベット順にならべただけのことなので、最初の作品だから名誉、なわけでもないのですが。

「ああ、やはり間違いないのだ」(Ah, che pur troppo è vero)HWV77

ソプラノ用のカンタータで、伴奏は通奏低音のみが担当する、いわゆるコンティヌオ・カンタータです。
1709年頃、フィレンツェかヴェネツィアで作曲されたのではないか、と言われています。作詞者は不明です。
比較的規模が大きい作品で、レチタティーヴォとアリアのペアが三つ、すなわちR→A→R→A→R→Aの楽章構成になっています。演奏時間は手持ちCDで15分50秒。

歌詞の大意。

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歌詞の冒頭、「ああ、やはり間違いない・・・」とは何が間違いないのか。
次の行を直訳すると、「私が愛の神(=キューピッド)の囚人であるということ」です。キューピッドはやたらに愛の矢を射て、人々を恋に陥らせます。だからそのような状態になったことを「キューピッドの虜になる」とか「恋に自由を奪われる」とかと表現することはよくあります。
しかしこの歌詞の場合やや事情が異なり、恋に陥った後に、恋人のクローリとは生木を裂くように別れさせられています。「二階へ追いやられた後、はしごをはずされた」状態、すなわち「してやられた」という感じなのです。

同じ第1曲のレチタティーヴォで8行目に「cieco Dio(無分別な神)」とありますが、これはキューピッドの別名です。彼が人の迷惑も考えず、めったやたらに矢を射るのでそのように言われるのです。
絵画の世界ではそのことを、目隠しをして弓矢を持っている状態のキューピッドを描くことで表現しています。これまでの記事でその実例をいくつも掲げたので、ここではもうその画像はアップしませんが、ボッティチェリの有名な「プリマヴェーラ」の中で、中央のヴィーナスの頭上を目隠しをして飛んでいる彼を見ることができます。

第4曲のアリアの冒頭Care muraは「親愛なる壁よ」という意味です。壁はその向こうに愛するクローリが存在するので「親愛なる・・・」と言っているのでしょう。一方、クローリとの間に立ちはだかっている障壁なので、本当はそれほど「親愛なる」と思っているわけないのですが、反語的というか、皮肉な感じで「お節介なことしてくれて・・・」といった気持もあるように感じられます。

ところでこの恋人と隔てられている「壁」とは、具体的には何なのでしょうか。歌詞の中には明確には表現されていません。
ハリス女史(Ellen T. Harris)によると、「遠くの町」、「修道院」、「お墓」、「家族の別荘に隔離」などが考えられるもの、と言います。
下の絵は、オランダの画家 Jacob Isaackszon van RUISDAEL(1628−1682)の作品「The Croister」。
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次は、ドイツの画家 Casper David FRIEDRICH(1774−1840)の作品「The Cemetery Entrance」。
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さらには、スイスの画家 Arnold BÖCKLIN(1827−1901)の作品「Villa by the Sea」。
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クローリがどこにいるのかは詳らかではありませんが、上の絵画のどこにいても、さびしくて涙が出そうなところばかりです。

第5曲のレチタティーヴォでは、キューピッドだけではなく他の神様たちにもクレームを付けています。関連の神様はキューピッドの母親であるヴィーナスでしょうか、さらには神々のトップ、神の世界のCEOとも言うべきジュピターも視野に入れて文句言っているのかもしれません。

終曲のアリアで、死ねば二度死ぬことになる、と歌っているのは、クローリと別れさせられた時点ですでに一度死んだも同然だからなのでしょう。
最後には何とか気を取り直して生きて行こうという気持が示されます。
これらを考え合わせると、そんなに愛するクローリ(各楽章すべてにその名が出てきます)ですが、別れは永遠のものではないか、と思わざるをえません。


参考資料
CD
マリア・ザードリ(ソプラノ)、C.ファルヴァイ(チェロ)、P.エラ(チェンバロ)
「G. F. HANDEL Duets & Cantatas」 HUNGAROTON HCD 12564-65-2(1984)

書籍
ELLEN T. HARRIS「Handel as Orpheus」 HARVARD UNIVERSITY PRESS(2001)

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