ヘンデルのカンタータ  歌詞の意味を考える

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zoom RSS 「俺の忠告を聞けよ」

<<   作成日時 : 2012/02/05 16:15   >>

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今回取り上げる作品も、前回と同様、ソプラノ用のコンティヌオ・カンタータです。

「俺の忠告を聞けよ」(Udite il mio consiglio)HWV172

構成はやや変則的で、レチタティーヴォ→アリオーソ→アリア→レチタティーヴォ→アリア→レチタティーヴォ→アリオーソ→レチタティーヴォ→アリア となっています。演奏時間もやや長めで、手許のCDでは19分36秒。

ローマのルスポーり侯爵家に残る、写譜屋さんの勘定書きの日付が1707年5月16日になっているので、この頃に初演されたものと考えられています。ただし作曲されたのは1706年、という説もあります。

作詞者の名は不明です。


歌詞の大意。

<Recitativo>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<レチタティーヴォ>
Udite il mio consiglio,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・俺の忠告を聞けよ、
inseperti d'amor pastori, udite;・・・・・・・・・・・恋の経験がない若い牧人たち、お前らだ。
Se incontraste giammai・・・・・・・・・・・・・・・・・お前らがいつか
qui dove suole・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・可愛い羊飼いの女の子に出会ったら、
guidar l'errante geggia・・・・・・・・・・・・・・・・・・その娘は羊の群を、
dal colle al piano, o dalla selva al fonte,・・・・・丘から谷へ、森から泉へ
piccio la pastorella,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・速い足取りで、
di menbra agili e pronte,・・・・・・・・・・・・・・・・・連れて歩き、
d'atti languidi e schivi,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・身ぶりはのんびりとして内気そう、
che ha nero ciglio in bianco volto,・・・・・・・・・白い顔に黒い瞳の、
e freggia della guancia・・・・・・・・・・・・・・・・・・・朱の唇が、
il pallor labbro vermiglio,・・・・・・・・・・・・・・・・・蒼白い頬によく映えているのだが、もし出会ったら、
fuggite, ah! sì fuggite,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・逃げろ、ああ!そのとおり、逃げるんだ、
que' suoi furtivi sguardi,・・・・・・・・・・・・・・・・・彼女の流し目や
e quelle sue semplicità mentite.・・・・・・・・・・純真そうなみせかけから。

<Arioso>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<アリオーソ>
Innocente rassembra,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの娘は無邪気に見える、
e pur riun'altra è al par di lei cruda,・・・・・・・・しかしあのように冷酷で
fallace e scaltra,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・不誠実でずるいものはいない、
innocente rassembra,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・無邪気そう、
e pur è scaltra.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だがずるいのだ。

<Aria>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<アリア>
Non le scherzate intorno,・・・・・・・・・・・・・・・彼女のそばで冗談言ってはだめだ、
ch'il cor v'accenderà.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前らの心に火をつけるぞ。
 E in chiederle pietà・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それに、心に生まれた情熱ゆえの
 del concepito ardore,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・哀れみを求めたら、
 dirà che nel suo core・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの娘は心の中で言うにちがいないのだ、
 stilla d'amor non ha.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あんたのための恋のしずくなんか持ってないわよ、と。
Non le scherzate(Da Capo)・・・・・・・・・・・・・・彼女のそばで・・・(ダ・カーポ)

<Recitativo>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<レチタティーヴォ>
Al verderia sovente, non curante e negletta,無頓着で気取らず、
abbassar gli occhi in sua meniera onesta,・・・・貞淑そうに目を伏せ、
o pur vergogna setta,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おとなしそうでさえあり、
piegar sul collo la leggiadra testa,・・・・・・・・・・小首をかしげて
e ognor pargoleggiar quando favella,・・・・・・・・いつも無邪気そうに話すのをしばしば見ると、
ognun diria che semplicetta è vaga.・・・・・・・・彼女はただの可愛い女の子だ、と誰でもが言う。
E per ogni suo vezzo apre una piaga.・・・・・・・・だが、その魅力のひとつひとつが心の傷を広げてくれる。

<Aria>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<アリア>
Non esce un guardo mai・・・・・・・・・・・・・・・・キューピッドの矢の
da quegli ardieri rai,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ようなものだったら
che non saetti n cor.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・心が傷つくことはなかったろう。
 E'l cor che vien colpito,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だが射抜かれた心は
 si sente già ferito・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すでに苦痛を感じている、
 che non lo crede ancor.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうと気づかないうちに。
Non esce un・・・(Da Capo)・・・・・・・・・・・・・・・キューピッドの矢の・・・(ダ・カーポ)

<Recitativo>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<レチタティーヴォ>
Volea più dir, ma tacque・・・・・・・・・・・・・・・・フィレーノはもっと話していたかった、
il misero Fileno,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だが可哀想な彼は黙り込み、
e quel che trasse・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ただ悲しげなため息を
doloroso sospir fuori del petto.・・・・・・・・・・・つくのみだった。

<Arioso>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<アリオーソ>
Non fa già per amor,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いや、それは恋のためではなく、
no, fu per dispetto.・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そう、恨みのためだ。

<Recitativo>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<レチタティーヴォ>
fuggite, ah! sì fuggite,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・逃げろ、ああ!そのとおり、逃げるんだ、
que' suoi furtivi sguardi,・・・・・・・・・・・・・・・・・・彼女の流し目や
e quelle sue semplicità mentite.・・・・・・・・・・・純真そうなみせかけから。
Innocente rassembra,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あの娘は無邪気に見える、
e pur riun'altra è al par di lei cruda,・・・・・・・・・しかしあのように冷酷で
fallace e scaltra,・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・不誠実でずるいものはいない、

<Aria>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・<アリア>
Allor che sorge astro lucente・・・・・・・・・・・・輝く星が空に出ると
più non s'adira mare sdegnoso,・・・・・・・・・・・不穏な海ももはや荒れ狂うことはなく、
e lieto gode saggio nocchier.・・・・・・・・・・・・ベテランの船頭はほっとして喜ぶ。
 Allora sorge, di ciel pietoso,・・・・・・・・・・・・・・・同様に情け深い天国の星が現れると
 placata l'ira e nella mente・・・・・・・・・・・・・・・・・怒りは静まり
 a rider torna lieto il piacer.・・・・・・・・・・・・・・・・心の喜びは幸せな笑みになる。
Allor che sorge・・・(Da Capo)・・・・・・・・・・・・・輝く星が・・・(ダ・カーポ)



最初は年配者が若い衆に説教をしているのかと思っていました。
しかし、読み進んで行くとそうではなく、フィレーノが同じ羊飼い仲間に自身の体験を述べているのだ、とわかります。自分のうまく行かなかった恋を、「経験者語る」という雰囲気で皆に伝え、「俺の轍を踏むなよ」といいたいのでしょう。
ところが、だんだん話を進めて行くうちに、悲しさと口惜しさがこみあげてき、ため息つくのみで話せなくなってしまったのですね。

フィレーノをこんなに悲しませ、口惜しがらせる羊飼いの女の子とはどんな人物だったのか。おとなしく無邪気そうで可愛い、というのは下の絵のような感じだったのでしょうか。
フランスの画家 Jean-François MILLET(1814-1875)の作品「Young Shepherdess」。
画像


第1曲レチタティーヴォの「朱の唇」とは「labbro vermiglio」ですが、ヴァーミリオンという色がまた出てきました。これがどんな色かはこちらに。

第6曲のレチタティーヴォと第7曲のアリオーソはナレーションになっています。。
下表(表をクリックすると拡大できます)に書いたように、第9曲のアリアは他の作品にも現れます。
「クローリとティルシとフィレーノ」HWV96とオペラ「ロドリーゴ」HWV5。
HWV96のフィレーノと当作品のフィレーノとはもちろん別人なのですが。

画像

ただ、エレン・T・ハリス女史によると、この作品はもともと第7曲のアリオーソで終っているのだそうです。
第8曲のレチタティーヴォと第9曲のアリアは、ドイツの音楽学者・クリュザンダー(Friedrich Chrysander 1826-1901)が編纂したヘンデル全集版で付け加えた、ということです。
そういわれてみると、第8曲は第1・2曲の部分的な繰り返し、第9曲は唐突なアレゴリー・アリアでいずれもこの作品にとっては、なくもがな、です。クリュザンダーがどんな意図で付け加えたのかわかりませんが、第7曲のアリオーソで終った方が歌詞内容のバランスとしてはずっと良好なように思えます。
アリアそのものはいい曲で、筆者も好きなんですけど。

ということになると、このアリアのオリジナルはHWV96かHWV5か微妙なことになりますね。


                        *  *  *  *  *  *


狩りに行こう<狩りの女神ディアナ>(Alla Caccia<Diana Cacciatrice>)HWV79 補遺

以前この作品を取り上げたとき、第6曲の「アリエッタ」でいきなりメランポ(Melampo)という名の「人物」が登場したので、よくわからないがギリシャ神話の登場人物(メランプース Melanmpus)で、鳥獣と会話ができる預言者のことではないか、という意味のことを書きました。

しかしそれは違っていて、このアリエッタに出てくるメランポとは犬の名前らしいです。

ギリシャ神話によると、水浴しているところを覗き見られたディアナは、怒って覗いたアクタエオンという男(猟師?)を鹿に変身させます。アクタエオンは自分が連れていた犬たちによって引裂かれ、殺されてしまうのです。
それらの犬のうちの1頭がメランポ(メランプース)という名前でした。
それで、このアリエッタでディアナが歌っているのは、メランポに対する感謝の気持なのだということです。

記事の中に掲げたDOMENICHINOの絵「Diana and her Nymphs」に、水浴している女性を覗き見している男が2人描かれています。
このうちの1人がアクタエオンかもしれません。
この絵で水浴しているのはディアナではないと思いますが、後に彼女が水浴するまでねばっていたのでしょうか。



                       *  *  *  *  *  *

参照した資料
CD
 ジュリアン・ベアード(ソプラノ)、ジョン・ドーネンバーグ(ヴィオラ・ダ・ガンバ)、マルコム・プラウド(チェンバロ)
 「G.F.HANDEL Italian Solo Cantatas and Instrumental Works」メリディアンCDE84189(1990)


 ELLEN T. HARRIS:「Handel as Orpheus <voice and desire in the chamber cantatas>」
 HARVARD UNIV. PRESS(2001)

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